2009年10月16日

ヘソ曲がりの原子力論/中林 恭之

ヘソ曲がりの原子力論の要旨は、次の三点である。

(一)地震よ、さようなら!
(二)地表型放射性廃棄物処分場
(三)東大 工学部 原子力工学科
 
ちなみに、ヘソ曲がりは、原子力は、開発推進すべきであると考えている。
しかし、自分の職歴は、化石燃料にかゝわる発電技術であったので、原子力に関しては、素人同然と自覚している。
 
(一)地震よ、さようなら!
 
浮体(Floating Barge)型、原子力発電所の提案。
日本は、全国どこでも地震の被害を受け得る世界有数の地震多発地帯である。従って、発電所の安全を論ずる時に、耐震強度が問題になるのは当然である。しかし現状の技術では、万人が納得する安全性が得られるとは思えない。
東京電力の原子力技術陣の実力は、世界のトップレベルに在ると思うが、それでも、新潟、柏崎地震をまともに喰った。この地震が、立地検討前に起こっていれば、現地点に発電所は、建設されたであろうか?現状の耐震技術に関する議論は、“剛には、剛をもって耐処する”式のもので、決着が得られるとは思えない。日本に於ける耐震技術は、“柔構造”で耐処する考え方は、過去に本格的に検討されたのであろうか?
 
ヘソ曲がりの提案は、浮体(Floating Barge)上の原子力発電所の可能性を検討することである。もちろん、そのヒントは、米海軍の原子力空母にあるが、平和利用の発電所の場合は、内海、堀込港湾内等に静止する方式となるだろう。とに角、浮体式とすれば、現状の地震加速度“G”の問題は、根本的に変わってくるはずだ。勿論、浮体式に伴う諸問題(係留、耐津波、浮体からの電力取り出し等等、無数に予想される)は、水利実験などを含めて検討されなければならない。しかし、現状の岩盤上で“豪”に耐処する方法とは、根本的に評価が変わってくるのではなかろうか!
しかし、新技術を開発しても、それを適用する地点は、あるのかという問題がある。ヘソ曲がりは、日本国内では既設原子力のリプレースに、この技術が適用可能と考える。 かなり長期の大きな需要があるはずである。また、日本の原子力発電技術の海外進出が考えられているが、この“浮体式原子力”は、ソフト、ハードを含めて輸出向きである。

北米大陸の太平洋沿岸には、原発は1基もない。南米もそうかな?また、インドシナ周辺海域等、耐震型原子力発電所を必要とする地域は多いのではなかろうか。日本国内の南北2ヶ所に、浮体式プラントの基地をつくればよい。この基地は、造船技術と発電技術をベースとする。日本メーカーのお家芸である。電力会社側も、リプレースの問題が容易となる。バージを新旧交代すればいいのだから。検討、実行は当然、全電力、国家規模で考えられなければならない。
 
問題は、複雑多岐にわたるが、これ以上は大論文となってしまうので、ここでは浮体式の提案にとどめておく。
 
(二)地表型放射性廃棄物処分場

浮体式プラントを考えていたら自然と、放射性廃棄物の最終処理は、何故深部地下なのかと云う疑問が起こってきた。岩塩層等を有する欧米諸国はよいとして、世界有数の地震国日本に、安全な深部地下があるのであろうか?深部地下よりも、安全に監視できる地表型は考えられないのか?こう考えたのは、当然浮体式貯蔵プラントが検討に値すると思ったからである。
これは、ついでに出てきた思い付きみたいなものであるが、地上式を検討したうえで深部地下が良いとされたのかどうか? 識者の御意見が聞きたい。

(三)東大 工学部 原子力工学科

大学は、云うまでもなく社会の夫々の分野に人材を供給すると共に、その分野の技術の最先端を開発する役割であり、大学の立場がグラつけば、社会のその分野の将来にも不安が発生し、おぼつかない。
東大が“原子力工学科”なる名称を変えたことに(現在の名称は、ヘソ曲がりとしては記憶していない)、グラツキを感ずるのである。
名称変更の理由は、その名称では優秀な学生が集まりにくいという点にあるのであろうが、羊頭狗肉の感がある。名称ではなく、その中身が問題なのである。

原子力技術を自由闊達な議論が出来るベースとして、国、大学、業界の一致した協力が大切だと思う。

(四)おわりに

原子力問題は重い。ブログの場に適当な話題かどうかと思う。
そもそも原子力問題は国頭君に任せて、ヘソ曲がりは、石炭に没頭していればいいと思っていた。その国頭君も亡くなって10年近い。その間自然と、原子力のことも考えるようになり、素人ではあるが、このまま何も云わずに死んでしまうよりはと思って、日頃考えていることの要旨を書いてみた。ヘソ曲がりとしては、中部の大田君、原電の武田君辺りから意見をいただければ幸いである。

                         2009年8月15日

編集長の付け足し
お嬢さんからのメールに下記メッセージが添付されていたので付記する。

「私自身も忙しくなり、パソコンから離れている日々が続いてしまい、父から頼まれた原稿の送付が大変遅くなってしまいました。日付を見たら8月… 
本当に申し訳ございません。以下の通り、第二稿をお送りいたします。手書き原稿に忠実にデータを起こしましたので、おかしな点も多々あるかと思いますが、何かございましたらお知らせください。」
posted by でんきけい at 01:38| Comment(2) | ひろば | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
久ぶりで、中林君の昔に変わらぬ元気な声(?)を聞いて、とても嬉しくなりました。
 そこで早速、書くことにしました。
(1)浮体式原発は、現在、ロシアが実用化を目指しています。彼らのことですから、そのうち、どこかに建造すると思います。また、日本でも、以前、提案されていましたが、津波のときどうするとか、係留地点の漁業補償とか、対岸の住民が反対するだろうとか、etc、で真剣に設計検討されなかったと思います。
(2)放射性廃棄物の地表処分は、広い無人地帯があれば、可能だと思いますし、廃棄物の放射線レベルによっては(低レベルの場合)、地表処分は確立された方法です。深層地下処分は、主として高レベル廃棄物に対して考えられたもので、以前は、日本海溝のような、深海底処分という考えがあったのですが、確か、ロンドン条約か何かで、国際的に禁止され、それ以降、深層地下処分が主流になったようです。確かに、深層といっても、千メートル以下(数百メートル)の地下ですから、地質構造や地下水脈のこと、地震や火山活動など、考慮すべき問題が多々あるようです。現在は、そういう条件をクリアーした場所を適地としています。この場合、地表処分と比較して、技術的難易、長期に亘る安定性、信頼性、初期および永年コスト、周辺住民のアクセプタンス等々がどうなるのか、僕はこの方面に暗いので、何ともコメントできません。しかし、廃棄物処理の専門家が、地下処分を推奨しているところをみると、地下処分の方が有利なのでしょう。実際、スウェーデンやフィンランドでは、地下処分場が出来ています。僕も、フィンランドのは、入って見てきましたが、地質は実に良い条件のところでした。
(3)我らが母校、東大の原子力工学科が、看板を変えたことは、僕も、中林君の意見に同感です。ああいうことをやる世の中は、全く嘆かわしいと思いますが、現代の若者気質の反映か、それとも、へなちょこ大人の媚か、これは、我々にも責任がありそうです。なお、東京工大は、原子炉工学研究所という名を変えずに、押し通したようです。

以上、長くなったので、この辺で止めます。
Posted by 武田充司 at 2009年10月16日 11:24
補足:浮体式原発に関連して、中林君が柔構造に触れていましたので、それについて補足します。
 原子力では、免震構造というのが、随分前から開発されています。円盤状の硬質ゴムと金属板を交互に積み重ねて接着したコラム(これを僕らは「象の脚」と呼んでいましたが)を碁盤の目状に基礎の上に立てて、その上に原子炉建屋を載せるものです。これは、現在、幾つかのの一般のビル建築で実用化されていていると思います。多分、そのR&D費用のかなりの部分は、我々が高速炉の免震のためにやった研究の恩恵に浴しているのではないかと思います。
 しかし、これでは、横揺れのみの免震で、縦揺れには無力です。直下型地震など、怖い地震は、縦揺れが強いので、縦揺れに対する免震も研究されていますが、こちらの方は、なかなか面倒で、原発に使えるような実用技術は、まだ出来ていないと僕は思います。
 一般の建築物では、こうした技術の応用は、ずっと簡単で、幾つかの新技術が実用化されているようですが、原発用は、極端な信頼性の要求があり、その上、原子炉建屋が巨大で、総重量も、一般のビルなどとは比べものにならないくらい大きいので、適用には慎重にならざるを得ません。
 僕の個人的意見ですが、これからの原発には、小出力の小型モジュラー・タイプのものを、もっと導入すべきで、そういうものには、免震構造も容易に適用できるでしょう。
Posted by 武田 at 2009年10月16日 13:53
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