2011年08月01日

原子力発電所について/井村 英一

 このところ、原発をどうするかの論議が活発だ。菅総理は、原発は減らしていくべきだとの考えを表明した。ドイツは脱原発を決めた。アメリカ・フランスは原発推進と言っている。

 最近、原発に関する二つの本を読んだ。

@ 「エネルギーと原発のウソをすべて話そう」武田邦彦著
先ず、原発をすべて止めること。その間のエネルギーは石油や石炭など石油系エネルギーに頼る。しかし、有限なので、原発を50年くらい停止している間に、本当に安全に運転できるような技術と人をつくって、その上で原発を再開すべきだ。

A 「原発のうそ」小出裕章著
原発は、電気が足りようが足りなかろうが、即刻全部止めるべきだ。火力発電所の設備利用率」は約48%なので、壊れていた火力発電所を復旧し、70%まで上げれば十分間に合う。また、エネルギー消費の抑制に目を向けるべきだ。

両者とも、太陽電池、風力などの自然エネルギーでの代換えは出来ないと考えているようだ。
私も、自然エネルギーは増やしていく方がよいとは思うが、代換えは無理だと思う。

武田氏が言うように、本当に安全な原発が出来るのか、また、小出氏の言うように、火力発電所の設備利用率を70%まで上げられるのか、私には分からない。諸氏のご意見を頂きたいと思う。
 
posted by でんきけい at 01:47| Comment(7) | 井村レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
原発という日本にとっての重要課題を真摯にとらえ2冊の本を読破されたことに敬意を表します。新聞、テレビの情報からは知りえない貴重な意見もあろうかと、インターネットで検索して、これまで疑問に思っていたことを少し調べてみました。太陽電池や風力などの自然エネルギーが直ちに原発の代替にならないのは確かでしょう。しかし、狭い土地に
多くの人口を抱え、地震や台風の多いことを考えると、少しずつでも原発依存を減らす努力をすべきでしょう。現在使用されているシリコン太陽電池の光電変換効率は限界にきているかもしれませんが、化合物半導体や有機系の太陽電池では、2倍位は実現可能なようです。量子ドットになれば更に向上が望めると思います。太陽光発電は、電力需要の平準化への寄与もあります。需要の平準化といえば、昔学生時代に揚水発電のことを教わった記憶があるのにあまり話題にならないと疑問に思い、検索して見ると、4月の週刊ポストに取り上げられたことを発見しました。意外に蓄電能力が大きいのに驚きました。また大口使用企業が所有する自家発電設備の正確な発電量も十分把握できていないようです。一方、節電については、真面目な日本人の特性が発揮されているようです。各個人や企業の涙ぐましい努力が反映されています。休電日は様々な不便を我慢して行われていますが、私達が新入社員の頃は、休電日は当たり前でした。大量消費に浮かれていた時代は終わったのです。これからは海外に発展しないと、化石燃料を買う資金も無くなります。現在でも世界的に高い電気料金は頭が痛い限りです。コストの正確な把握と技術のブレークスルーが望まれます。
Posted by 大橋康隆 at 2011年08月01日 21:32
原子力発電所の安全に対しては、今回の3.11事故後不信感が高まりましたが、客観的にみて、原子力発電所は、これまでもかなり安全なものだったと考えられます。と言うのも、日本では、これまでずっと、多くの原子力発電所が運転されてきたにもかかわらず、発電所の設備のトラブルや運転員のミスなど(すなわち、内部事象)によって今回のような重大な事故が起こっていないからです。
 実際、スリーマイル島事故やチェルノブイリ事故の経験など、世界のどこかで事故やトラブルが起る度に、それを分析して絶えず対策を積み重ねていて、ヒューマン・エラー対策の例をみても、様々な対策が非常に進歩しました。
 しかし、今回の巨大津波ような外部事象に対する対策の甘さから、悲惨な事故を起したので、今後は、こういう面での対策が進むでしょう。そうすれば、更に安全性は向上するので、これからは重大な事故は殆ど起らなくなると考えられます。
 しかし、問題は、どのくらい安全ならば一般の人が許容するかです。人間のつくった物ですから、絶対大丈夫とは言えません。この判断は、専門家である原子力技術者がやるべきものではなく、使う側の社会がやるものだと思います。我々技術屋は、この程度のことは出来るということを示すだけです。
 また、原子力技術で特に問題なのは、起る確率は非常に小さく、その限りでは世の中の一般の技術より遥かに安全性が高く見えるのに、万一事故を起すと非常に被害が大きく複雑な結果を誘発するという特殊性です。生起確率と起った時の損害の大きさを掛けたもの(確率論でいう期待値)で判断すれば、自動車や航空機に比べて、原子力発電所は統計的にずっと安全なはずなのですが、起った場合の損害の大きさが、人間の身の丈を超えてあまりに大き過ぎると、いくら生起確率が無視できるほど小さくとも、その技術は社会では受け入れられないかも知れません。そういう限界値的なもながあるとすると、その限界値はどのレベルなのか、それは、その社会の文化的特性や風土、特に豊かさなどに依存したものとなるのでしょう。
 原子力技術は、そうした新しい問題を提起しているとも言えます。産業革命以来、人類は、科学と技術の進歩によって豊かな社会を築いてきましたが、その過程は様々な失敗と事故との戦いであったことは技術屋ならば誰でも認めるところでしょう。そして、今やそうした西欧型の進歩思想の頂点に達した技術文明の象徴のひとつが原子力やインターネットの技術ではないかと思います。原子力は、良くも悪くも、右代表として、現在、世の中からきびしい目で見られているようい思います。
Posted by 武田充司 at 2011年08月02日 08:42
最近トリウムを使用した溶融塩炉の原発が安全であると言う記事を読んだ。どう安全なのか私には素人なので分かりませんが、アメリカで1965年から4年間無事故で運転した実績があるとのことで、日本では余り問題にされていないようですが、チェコがその技術を育てているとのことで、そのほか多くの国が関心を持っており、開発を進めている国もあるようです。文春新書で古川和男著「原発安全革命」という図書が刊行される予定とのことです。
Posted by 沢辺 at 2011年08月02日 09:04
ご意見有難うございます。
太陽電池などの自然エネルギーは、どの位の発電量になるか、まだ分かりませんが、その分、原発や火力発電を減らせる訳ですから、推進する必要があると思います。
原発は、確かに、一般の国民に安全さを納得して頂くことが、大事だと思います。そのためには、科学者が、いかに説明出来るかに、掛かっていると思います。
トリウム溶融塩炉は、安全だと説く本を、立ち読みしましたが、ウイキペディアによると、α線に加え強いγ線が発生するトリウム溶融塩を冷却材として使用するため、厳重な遮蔽と遠隔操作が必要とのことで、安全性に疑問があるのではないでしょうか?
(井村 英一)
Posted by 井村 英一 at 2011年08月02日 15:02
皆さんよく勉強しておられますネ。この問題は百家争鳴、私の意見は…
ヒトは火を手なづけるようになってサルとの大きな差を持ちました。サルたちはどれほどヒトの火を羨ましがったことでしょうか。しかしその火はいつも人間にやさしい存在ではありませんでした。ロンドンの大火1666、シカゴの大火1871、そして江戸の振袖火事1657など。しかしその大火にヒトは屈しないで街を改造し、火を安全なものにすることに智慧を絞ってきました。
化石燃料は1972年のローマクラブが「成長の限界」に述べた予測より大分先が伸びていますがいづれ枯渇することは見えています。太陽、風力などの自然エネルギーの開発もこれから一層盛んになるでしょう。以前私はこの欄で地熱発電へのラブコールをしました。そうした努力は必要ですがなんといっても原子力は電力量や効率の上で有効なエネルギー源です。いづれ核融合も俎上にあがるでしょう。危ないのは火でも原子力でも同じ。
今回の事故で安全への配慮は格段に要求されるでしょうし、研究は進むでしょう。取り扱いが悪ければなににでも事故は起きます。今回の事故に懲りて止めるのではなく安全な原子力発電システムを育てることが必要でしょう。それが人の歴史の自然な流れというものです。ただ使用済み燃料を埋めるのではなく全く放射能が無くなるような研究をしてほしいしと思います。
Posted by サイトウ  at 2011年08月02日 21:39
 トリウム溶融塩炉については、古川さんが若いときからずっと研究されていて、世界的権威です。多分、古川さんの本に付け加えるべき事などないと思いますが、蛇足として、少しばかり付け加えさせてもらえば:
 トリウム利用の原子炉には、溶融塩炉のほかに、黒鉛減速ヘリウム冷却の高温ガス炉という型の炉が開発されていて、1970年代に実用化され、電気出力30万kW級の発電所が、米国とドイツで1基ずつ建設され、運転されました。しかし、現在の軽水炉と非常に異なる技術であったことや、軽水炉に比べて経済性で劣ることが原因で普及しませんでした。
 核分裂反応による核エネルギーを本格的に利用するとすれば、現在のプルトニウム・サイクルからトリウム・サイクルに移行すべきだと僕はずっと考えていましたが、その場合、多分、溶融塩炉が最終的な目標になるでしょう。
 トリウム・サイクルでは、確かに、強いガンマ線を出す核種が絡んできますが、これは核不拡散上有利な特性で、原子炉の安全性とは直接関係ありません。高温ガス炉の例では、燃料溶融事故が起り難い(殆ど起らない)設計が可能で、この特性は高温ガス炉が使用しているセラミックの被覆微粒子燃料に由来していて、金属被覆管タイプの在来型燃料との大きな違いです。
 また、トリウム・サイクルで使う燃料(核分裂物質)はウラン233(U-233)ですが、この原子の核特性のおかげで、トリウム・サイクルでは、燃料の増殖に高速炉が不要になります。すべてが、現在実用化されている熱中性子炉技術で完結します。
 最後に、日本では、原子力研究所(現在は、何とか機構)で昔から高温ガス炉の開発をやっています。また、中国でもドイツの技術を導入して高温ガス炉の実用化を目指しています。溶融塩炉は、米国のオークリッジ国立研究所で、1950年代から開発されていて非常に優れた技術蓄積があり、一時は、殆ど実用化のレベルに達したと考えられていましたが、米国の電気事業者が関心を示さなかったため実用化が見送られた経緯があります。
 以上、40年近く前に高温ガス炉をやっていた老兵からの蛇足です。
Posted by 武田充司 at 2011年08月04日 07:44
トリウム溶融塩炉についてのご教示有難うございました。私は原子力については、全く素人で、聞きかじりで、余計なことを言いました。申し訳ありません。
Posted by 井村 英一 at 2011年08月04日 12:02
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