2016年01月01日

かるた/斎藤 嘉博

 明けましておめでとうございます。皆様にはご機嫌よく新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。今年もこの欄をみなさまへの賀状に代えさせて頂きます。

  子供の頃は「もういくつ寝るとお正月」、いまは「もうお正月!」。時の経つのが早いこと。地球が小さくなっただけ回るのも早くなったようです。子供の頃はイロハかるた。“イヌモ歩(アル)ケバボウニアタル、花ヨリダンゴ」とことわざの宝石箱。長じて小倉百人一首。恋を歌った100枚のかるたをしっかりと覚えたものでした。毎年お正月には阪本先生のお宅に研究室の方々が集まって、奥様のお手料理を頂きながらお話しをし、ブリッジをしたり、かるたをとったり。かるたは田宮さんはじめ女性の方々が大変お上手だったのを覚えています。私も好きなほうで、“あ”で始まる札は16枚、“むすめふさほせ”は一字決まり、“わだのはら”は6字決まりとすっかり覚えていたものでした。
  昨年京都に行った折、名古曾の滝を観てきました。「滝の音は絶えてひさしくなりぬれど、名こそ流れてなおきこえけれ」。大納言公任の歌です。リズムがいいので覚えやすいカードでしたが、その意味にはそれほど気に留めないでおりました。京都嵯峨、大覚寺の庭になっている大沢の池の朝は人影もなく紅葉には少し早い静かな光景でした。その奥の方に名古曾の滝の遺跡があります。なるほど流れているのは名ばかりで水は全くない石組の枯れ滝。歌が詠まれたのは999年と伝わっていますので、滝の音が聞かれたのは嵯峨天皇の離宮として作られたころ、歌より150年ほどを遡るころだったのでしょう。実態が無くなって名だけが独り歩き。公任の身につまされる想いがこの滝跡をみているとよく分かるような気がしました。大沢の池と名古曾滝跡(75%).jpg
大沢の池と名古曽滝跡
かるた1(50%).jpg
かるた1
  “風そよぐ”と家隆が詠んだ“ならの小川”。これは奈良にある川と思っていましたが、葵祭で有名な京都の上加茂神社のなかを流れている川。川幅はたかだか3mほどですが水量は豊で、“水の京都”にふさわしい誠にきれいな水が流れています。曲水の宴ができるようにとこの流れの一部が引き込まれて蛇行し、流れを観ているだけでなにか平安朝の雅を感じることが出来るのでした。
  かるたのタイトルでもある貞信公の「をぐらやま」はだれでもが知っているポピュラーな歌です。定家が百種の歌を選集したとされる小倉山は嵯峨嵐山、天龍寺のすぐ北にある標高286mの低い山です。歌は優雅ですが昔は荒れ果てていたのでは。しかし今この場所に小倉百人一首の博物館、時雨殿があります。私はまだ行ったことがないのですが、ネットによると歌仙人形の展示などなかなか面白そう。この次の京都行きでの楽しみにしたいと思っています。
  京都には“あらざらん”の和泉式部、“めぐりあいて”の紫式部、“花の色は”の小野小町、“よをこめて”の清少納言、四人の有名レディーゆかりの地が沢山あります。御所に近い蘆山寺には紫式部の邸宅があったと言いますし、紅葉の通天橋で有名な東福寺の塔頭、補陀落寺には小野小町の墓があります。かるた2(50%).jpg
かるた2
  そしてこの寺のすぐ隣の山手にある御寺(みてら)泉涌寺には清少納言の歌碑があります。このお寺も森の中で、奥に天皇数方の御陵があり、楊貴妃観音という大変美人な観音様もあってゆっくりと楽しむことができます。
  お正月の三日には毎年八坂神社で十二単姿の女性がおこなう“かるた始め”の祭りがあるとか。かるたを通して平安時代に思いをいたし、若かった60年の昔を思い出すのもお正月の楽しみではないでしょうか。今年もお元気にこのブログでお会いしましょう。

  花の色は 絶えて久しくなりぬれど、なおあまりある昔なりけり  よしひろ
posted by でんきけい at 00:00| Comment(1) | 斎藤さんのお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
小倉百人一首かるたは戦前私たちよりちょっと古い世代までとても盛んでしたね。私の育った静岡の近所でも盛んで、姉達につられて私も小学校4−5年の頃100首しっかり憶えました。
ジュネーブ勤務時代、お正月に日本人家族のかるた会があり、奥様方が主でしたが私も呼ばれたことがありました。数十年やったことなかったので、参加する前に練習をしておこう、でも手元に札も本もないので100首を記憶を頼りに書き留めてみました。でも97首までで、どうしても残り3首が思い出せませんでした。1首は「八重むぐらしげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり」だったと思います。あとの2首は今も思い出せません。
Posted by 新井 彰 at 2016年01月08日 17:58
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