2016年10月16日

拝啓魚屋さん/斎藤 嘉博

  9月の終わりに大塚の萬劇場で「拝啓魚屋さん」を観てきました。
  高橋編集長から折々ご子息高橋ひろしさんのHP更新のメールが送られてきます。それを観て面白そう!と足を運んだ次第。萬劇場は大塚駅からすぐ、地下二階に造られたちいさい劇場で120ほどの席はほぼ満員。こうした演劇への若い世代の関心が分かります。
  商店街に隣り合う肉屋と魚屋。 幼なじみの両親が結婚し、2つの店を切り盛りする家族がお母さんを亡くした後の店の存続について意見の対立を見ています。高橋ひろしさんが扮するお父さんはもう店をたたもうという意見で準備中、しかし娘さんは絶対に店を閉じないぞ、私が切りもってみせますと頑張る。それを巡って若い人たちの友情と信頼が交錯するというのがあらすじで、いまどきありそうなお話し。  魚屋さん(80%).jpg
魚屋さん
  舞台は右に発泡スチロールの箱が積まれた魚屋、左に肉のケースを置いた肉屋、正面に喫茶店といった構成。喫茶店の看板に書かれた電話番号562-8262やブリキの傘を付けた街灯の様子から推定すると時代は1980年前後。都の西郊あたりのお話かナと推定されます。その頃は大資本が町の個人商店を買収してスーパー、コンビニが増えてきた時代。近頃では八百屋はまだ目につきますが、魚屋、乾物屋、文房具屋、和菓子屋といった商店はコンビニに追われ、また跡継ぎがないなどの理由でめっきりと少なくなってきて、増えるのは食べ物屋ばかり。乾物屋をみることができるのはあめや横丁とか京都では錦小路といったところでしょうか。そんな時代のなかで娘さんはお父さんの意志に反してこの魚屋をつづけるぞと意気込み、その仲間たちが頑張れエと声援する舞台はなるほど世相を映していますし、こちらもガンバレーと応援をしたくなるのです。

  少し前大塚家具でも親子の対立があって世間をにぎわしました。お父さんは昔ながらに高級家具一本でと主張しお嬢さんは高級ばかりでなく庶民向けの家具もと。“老いては子に従え”とは昔からの格言。一度ゆずった会社であればもう若い世代にまかすのが正道と思うのですが。魚屋さんは一心太助以来、品物の新鮮さをアピールする意味で威勢のいいのが看板。日保ちの短い商品ですので仕入れなどのマネジメントには苦労が多いだろうと思いますが、舞台での魚屋さんも結局若い仲間の協力で閉店をまぬかれ、めでたしめでたし。高橋ひろしさんは、前回のリヤ王の嵐の中の緊張した舞台とはちがってゆったりとした芝居を上手にこなしておられました。芝居が好きで好きでたまらないという二十人の方たちがこうして演じる舞台には大きな好感が持てるのです。ガンバレーというみなの合唱を耳に残しながら夜道を帰ってきましたら都内では唯一の路面電車、レトロな荒川線の新車が私のまえを通り過ぎていきました。

  去る9月、これも大塚の南大塚ホールで豊島区オペラソリストの会主催“魔笛”の公演がありました。遠い親戚のお嬢さん、山村晴子さんがパミーナを歌うとあって足を向けました。彼女、昨年は椿姫でプリマドンナを、今年の7月にはコジファントゥッテのフィオルデリージを歌うとなかなかの活躍。華奢な身体ですが声のヴォリュームは十分で椿姫の長丁場をしっかりとこなしましたし、今回の魔笛でもザラストロの与えた試練を乗り切ったタミーノとの出会いを楽しく歌いました。 魔笛のコピー(90%).jpg
魔笛のコピー

  こうしたオペラは藤原歌劇団や二期会、あるいは海外からの引っ越し公演とは違ってオケも小編成で舞台も質素ですが、やがては大舞台に立つであろう方たちが懸命に幕を作って快い舞台となっています。

  折々友人が、お子さんあるいはお孫さんが演奏会をしますと案内状を送ってくださいますし、昔ムサビで教えた学生たちが「こんな芝居をやります」「インスタレーションをしますので」「写真展をします」と誘ってくださいます。若い世代がひたむきに自分の目指すものを勉強し公演しているのはうれしいことで、もう世の中の役には立たなくなった小生、せめてこうした若い人たちを応援しようとできるだけ足を運ぶことにしているのです。
posted by でんきけい at 00:00| Comment(1) | 斎藤さんのお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 萬劇場へ足を向けて頂き有難うございました。若い人たちを応援しようと思う気持ちでの行動、見習いたいと思いました。
Posted by 橋郁雄 at 2016年10月17日 09:25
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