2017年04月01日

モーニング・ティー/武田 充司

  昔、北イングランドのカンバーランド地方の小さな町で4ヶ月ほど暮らしたことがあった。その町はシースケールといって、名の如くアイリッシュ海に面する海岸にあったが、当時、そこにはホテルはなく、ホテルより格下の古びたインが数軒あるだけだった。
   そこで、眺めのよい海岸に建っている小さなインを選んで滞在した。それは初めてのイギリス滞在で、1962年の6月のことだった。
   正面には当時オートレースで有名になっていたマン島が見え、その上から大きな夕日がアイリッシュ海に沈んでゆく。退屈を絵に描いたような静かな田舎町の生活だった。その1日は、朝6時にドアをノックするメードの声で始まる。彼女がモーニング・ティーをベッド脇の補助テーブルに置いて出て行くと、先ず、ゆっくりと朝の紅茶を味わって、それから身支度を整えて階下のラウンジに下りて朝食をとる。
   当時、あのような田舎の小さなインでも、毎朝決まった時刻に、目覚まし代わりのモーニング・ティーを届けてくれたのは、いま考えると、古きよき時代の英国の習慣だったのではないか。歳をとって、ふとそんなノスタルジアに浸っていたのだが、研究社の新英和大辞典でmorning teaを引いてみると、「〔豪〕午前10時頃のお茶の時に供する軽食付きのティー(英国のelevensesに相当)」とある。そこで、elevensesを引くと、「〔英〕午前11時ごろ食べる軽食(コーヒーまたは紅茶のみの場合もある)」と出ている。どっちにしても、朝の目覚めのティーではない。しかし、55年近く前の記憶とはいえ、あれは確かに「モーニング・ティー」と言っていたのだが・・・。
posted by でんきけい at 00:00| Comment(0) | 武田レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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