2017年04月16日

トラム/齋藤 嘉博

  前稿“路面電車”には諸兄から楽しいコメントを頂きました。子供の頃は誰でも鉄道模型に魅惑されていました。それだけ路面電車には郷愁があるのでしょうか。
  諸兄は海外に行かれ、あるいはビジネスで長く滞在されている方が多いので、その街のトラムを上手に利用されていたと思います。国内で出版される海外旅行の指南書は鉄道、地下鉄については記載されているものの、トラムについての記述はほとんどありません。系統図も現地の案内書でしか手にはいらないのです(最近はネットで知ることが出来る街もあります)。旅行者にとっては地下鉄とかタクシーが移動の手段として便利でトラムはやや使いにくい乗り物なのでしょうか。しかしトラムはその街の生活が身近に感じられる楽しい乗り物です。
  自動車王国アメリカでもけっこうトラムが便利に利用されています。流石にNYやロスアンゼルスには電車がないようですが、ボストンにも、デンバーにも。有名なのはなんといってもサンフランシスコのケーブルカー。パウエルストリートの坂道を手すりにつかまって風を受けながら乗っている気分はたまりません。  トラム1のコピー.jpg
パウエルストリート
  この電車、終点の海洋公園にくるとターンテーブルに乗って人力でゆっくりと方向転換。そのしぐさを見ていると東京の市電が終点に着いたとき車掌さんが車を降りて、二本のポールから垂れた紐を引きながら方向を変えていたのを思い出します。それにしてもあの坂道、そして曲がり角のある線路の上を地下のケーブルをつかんで走るこの電車は、発想も技術もたいしたものですネ。このサンフランシスコにはケーブルではない普通の路面電車がマーケット通りなどを走っていてパウエルから一回の乗り換えでフィッシャーマンズワーフまで行くことができますが、道が広いだけに走っている電車の車体はややメタボ。
  シカゴは頭上を走っているので路面電車とは言い難いでしょうが、私の印象に残っているのはニューオリンズ。ミシシッピクルーズの乗船所あたりをハブとしてかなり幅広く街の足になっています。私が宿を取ったのは繁華街バーボンストリートの一角にあるホテル。ケージャン料理を食べに行こうかと何番だか忘れましたが電車に乗りました。街はずれの静かな住宅街にあるレストランの庭にしつらえられたテーブルでの料理に舌鼓を打ち、暗くなってからの帰り道、電灯のついたトラムに乗って静かな住宅街を走っているとなにか銀河鉄道に乗っているようなよい気分だったのを覚えています。 
  欧州ではパリ、ロンドンは別にしても大抵の大きな街には路面電車が走って市民の足になっています。ローマはちょっと掘ればすぐに遺跡が出てくるという土地柄ですので地下鉄は2系統だけ。オレンジ色の路面電車が大切な役割を果たしています。トラム2(80%).jpg
ローマの市電
  印象に残っているのはベルギー、水の都で有名なブルージュの隣にあるゲントは古い街で道も狭い。その狭い路をもう商店のテントすれすれに人をかき分けて進むトラム。もちろん単線しか作れませんから復路は別の道を走っていました。
  チューリヒの繁華街、大きなショーウィンドウが並ぶバーンホフ通りを走るトラムはなかなかスマートな青色で近代的な感じですが、その雰囲気は昔新宿の三越、伊勢丹の前を走っていた11番、12番の市電と同じです。トラム3(80%).jpg
バーンホフ道り
  アムステルダムの「東京駅」はこの街のトラムのハブで、ここから乗るとダムを通りいくつかの運河を渡ってフラワーセンターまで運んでくれ、この街の様子をかなり理解できたような気になるのでした。
  しかし欧州でのトラムの一番はなんといってもウィーン。あの100m以上もある幅広いリングの端、街路樹の下をつつましやかに走るトラムは絵になります。ドナウ運河に近いユリウス広場あたりで時計回りの1番の電車に乗れば、左にはすぐ音楽家の銅像が多い市立公園、やがて右にオペラハウス、そして王宮、左に美術史と自然史の博物館と見どころが次々と。この自然史博物館も昔の王宮の建物で落ち着いたよい博物館です。やがて左に国会議事堂、市庁舎と一周30分弱ぐらいだったと思います。背後に窓のあるベンチシートではなくてチェアシートですから、座ったままでゆっくり主な建物を見ることが出来るのです。終点に着いたらもう一度今度は2番のトラムに乗って反時計回りに同じ道を。1番、2番以外に乗るとどこかでこのリングをアウトして、リングのとり澄ました顔とは異なった生活の匂いが濃い街の中に運んでくれます。

  そう東京でも皇居の周り、内濠通りに都電を走らせたらどうでしょう。明治38年にできた電車唱歌(五十二番まであります)の一番にも「玉の宮居は丸の内、近き日比谷に集まれる、電車の道は十文字…」とありますが、二重橋、日比谷公園からスタートして桜田門、警視庁の前を通って三宅坂、桜田濠を右に見て半蔵門、英国大使館、トラム4(80%).jpg
桜田濠の景観
  右に曲がって吹上大宮御所と国立近代美術館の前を通り、気象庁のところから大手町のビジネスビル街を抜けて日比谷に戻る皇居一周のリング。

  これなら東京の落ち着いた、しかも整然とした佇まいを見ることが出来て外国からの観光客にも自慢が出来そうです。都民ファースト賛成、しかし未来セカンドで将来の素敵な街づくりを小池さんに提言しましょうか。私の生きているうちには実現しないでしょうが。
posted by でんきけい at 00:00| Comment(2) | 斎藤さんのお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントが遅くなりました。マンションの3回目大規模修繕が終わったと思たら、防災訓練や今後の大規模修繕の進め方説明会などがあって、暫くPCを留守にしました。
海外のトラムのお話を興味深く拝読しました。私が定年後の旅行で、一番お世話になったのはウィーンのリンクです。東欧旅行の拠点で数回宿泊し、隈なく探索しました。アムステルダムやゲントのトラムにもお世話になり、懐かしい思いです。欧州ではドイツをはじめとして各国の中小都市でトラムが効果的に活用されています。不思議なことにサンフランシスコは海外出張で屡々訪れたにもかかわらず、トラムを眺めただけで乗ったことがありません。
皇居一周のリングにトラムを導入する提案には私も大賛成です。旅行者にとって、トラムは好評であると確信しています。私の育った岡山市では、駅前から市の中心城下を経由して東山線と、柳川で分岐する精輝橋線が活躍しており、結構便利です。残念なことに、戦前は城下から分岐して番町線があり、その終点近くに住んでいたのですが、戦後、国道の拡幅に伴い廃線となり、住んでいた場所もなくなり、旭川の東側に引っ越しました。
Posted by 大橋康隆 at 2017年04月18日 20:18
今回のトラムの記事も大変楽しく拝見致しました。色々な国の電車には私も訪れた町が幾つもあり懐かしいお話でした。早速コメントと思いましたが、チェック要する事もあり古い写真も出て来ましたので少し時間を頂きたいと思い、先ず斉藤さんへの感謝を申し上げます。
Posted by 小林 凱 at 2017年05月07日 20:24
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