2017年05月16日

ブログ投稿再開「技術者の英語(続編)」/寺山 進

  本年春季の30会で、偶々高橋郁雄兄と隣になった。雑談途中「又ブログに投稿しないか」と誘われた。体力が低下しただの、目が悪くなっただの、ぐずぐず言ってみたが、敬愛する編集長の依頼は断れない。
  早速何を書こうか考えてみたが、どうも良いテーマが見つからない。そこで今までの自分の投稿を見直してみると「技術者の英語」が浮かんできた。級友諸氏からも、かなり共感のコメントを頂いていたので、その続編から始める事にしたい。

  長いサラリーマン生活の間に、随分「英語」には苦労してきた。今振り返ると、業務の一環ではあるが半ば義務的に出席していた「ビジネス・パーティーでの英会話」は特に憂鬱だった。昼間の打ち合わせなどでくたびれ果て、早くホテルに帰りたいところなのだ。
  最初の内は、お天気の話などの後が続かず、時の経つのをただ待つばかりだった。やがて、会話のキャッチ・ボールはとても無理で、こちらから一方的に話した方が楽な事に気づいた。 

  向うの連中、主として欧米のエリートだが、案外外国語を勉強していないのが多い。これは勿論、英語つまり自分の母国語ですべて事足りるからで、考えてみるとこんな不公平な話は無い。
  文字と言えばアルフアベットと思い込んでいるので、表意文字はテーマとして手頃である。そこで、漢字の事など紹介する事にした。 
  「漢字・かな交じり文などは、表意文字と表音文字を組み合わせた独特の言語記述法で、日本が誇れる文化遺産の一つである」と自慢すると感心してくれる。

  お笑いの鉄板ネタは「姦」の字である。最初に「女」の字を指で書いて見せて、之は「girl」、場合によって「lady」や「woman」にもなると翻訳する。
  「つまり、Female of Homo-sapiens-sapiensなのだ」とやるのも、時には必要である。
  下手を通り越して幼稚な英語を聞いていると、段々相手が本当のバカに思えてくるのは止むを得ない。向うも疲れているのである。その頃を見計らって、わざと専門用語や学術用語を一寸挿入して、目を覚まさせる。

  次に「姦」の字を書き、どういう意味か分かるかと聞くと、大抵まともには考えないので、分からないと言う。そこですかさず「Three girls together means noisy」とやると、ウケル。
  メモ用紙を持ち出して、字を教えろというのも多い。初めて漢字を書くのに、案外苦労している。「く」の部分の角度やら正式な書き方など聞いてくる几帳面な技術屋もいて、漢字を教えるのも案外面倒くさい。
  殆どの人は、次のパーティのネタにするのだという。この連中にも同じような苦労があるのだな、と妙に親しみを感じた事もあった。

  「かしましい」を「noisy」と切って捨てるのは、多少気が引ける所である。三人組の「かしまし娘」(といっても長姉の正司歌江師匠は、近く米寿を迎えるという)に怒られそうだ。
  最近、米国籍のエリート風お笑い芸人がテレビに出て来て、漢字ネタで若い人の笑いを取っている。もう小生の漢字ネタなど通用しない時代か。そう云えば、最後に仕事上で欧米人に会ってから、二十年近くになる。

  南部なまり、所謂「Southern accent」のモノマネも、身に付けておくと便利である。「Hot water」がやりやすい。まず出来るだけ正確に、英国風または米国東北部風に発音する。次いで口を一寸開け、唇を動かさず喉の奥の方で、日本語で「はっ、わーら」と言うと、南部の人は大笑いする。何故か北部の人は笑わないが、時と場合があるみたいだ。
  ノース・カロライナ州にResearch triangleという地域があって、I.B.M.も事業所や研究所を進出させている。ここでやった時は、ハーバードやMITを出た筈の、北部出身のエリート達も笑ってくれた。

  ケネディー大統領・就任演説のモノマネが得意な商社の人がいた。「Ask not what your country can do for you but ask what you can do for your country」がサワリである。そこで早速ソノシートを買って来て聞いてみた。しかしこれは元々かなり発音が上手な人でないと無理である。意外にカン高い独特な声も真似しにくい。直ぐに諦めて良かった。その後悲劇が起きて、お笑いのネタにはならなくなったのである。

  今のトランプさんは、口元を歪めて「We Will Make America Great Again」とゆっくり言えばいいので、久し振りに日本人でもモノマネしやすい大統領が出て来た。但し、本人自身が笑いの対象どころか不安と心配の根源なので、ラスベガスのプロなら別だが、日本人が「パーティー」でやっても、お笑いのネタにはなりそうもない。

  閑な時間が充分ある現在なら、この種の「パ−ティ−」のテ−マ位、幾らでも考え出せそうである。事前に我田引水の迷理論と、適当な英語の表現を用意しておいて、之を会場で披露してケムに巻くわけである。

  例えば、「胡麻を擦る」と「Apple Polishing」である。上司に気を使うのは、洋の東西を問わないのであるが、我が方の深遠かつ哲学的な「人間と組織への洞察力」に比べ「リンゴを磨く」という相手側の何と軽薄な事か。

  又、家庭内夫婦に於ける権力構造、平たく言うと「女房の尻に敷かれている亭主」対「Hen-pecked Husband」の話題もある。我が方の「微笑ましさ」対「雌鶏が雄鶏を突っつく」という「いじめ」を連想させる相手側との比較論議。

  「Hen Party」と「Bull Party」。欧米諸国における「パ−ティ−」は、男女同伴が普通である。従ってこの表現は、特別な場合としてその様に云われているのだと思う。ただ、これには何か深い含蓄があるのだろうか。中々難しそうな問題だ。

  しかし、今やそんな事を考える必要は全く無いのである。

  憂鬱だった「ビジネス・パ−ティ−」を、今となっては懐かしんでいる心境なのかもしれない。
posted by でんきけい at 00:00| Comment(1) | 寺山レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
寺山兄のブログを読むと、不思議に共感してしまいます。寺山兄が英語の話題について色々配慮されておられていたことに感心しましたが、私は典型的なB型人間で、相手かまわずマイペースで過ごしてきました。昔、米国出張での航空機の隣席の青年に日本語を教えてほしいと言われました。鞄からA4用紙を出して、アイウエオの50音表をカタカナとローマ字で作り、日本語は5つの母音と9つの子音の掛け算で構成されていると説明したら、「大変論理的な言語だ。」と甚く感心していました。以後、英語の通じない国では日本語を教えるようにしました。1968年にアルゼンチンで国際会議が開催された時は、レストランで「赤」とか「白」といえば葡萄酒が出てくるようになりました。ノースカロライナのIBM研究所は私も訪問しました。同行したのはNEC AMERICAのM Sales Managerで、彼はフロリダのDisney World内にあるビスタ電話会社に光通信機を初輸出した時の担当でした。IBM訪問前夜に特別な炭火焼きのステーキがでるレストランに連れて行ってくれましたが、珍しくおいしかったことを、懐かしく思い出しました。
Posted by 大橋康隆 at 2017年05月16日 22:29
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