2017年10月16日

近頃思うこと(その28)/沢辺 栄一

  私はNHKのTV番組「日曜美術館」を毎週観ている。
  昔の芸術家の作品を見たり、その作品制作の背景を知り感心することが多いが、最近の芸術家の絵画、造形物には私の美意識の狭さによるものと考えられるが、勝手な自己満足と思いつきに過ぎないものとしか思われない作品がある。それでも自分の好きな絵画、造形に関して独りよがりと思われる創造性を発揮して創作し、その一つ一つが作品として残され、それらが集められて、その芸術作者の名の付いた美術館が出身地等に建設されている。芸術家は特別な場合を除いて公共への貢献を考えず、主として個人で自分のために創作活動を行っていると思う。

  一方、技術者は主として公共のために、世間のニーズ、組織の方針に沿ってグループでデバイス、機器、システムを創造し、開発する。20数年前NHKで「プロジェクトX」と言う名で、地上の星としてそれまで知られてない社会に役立った機器、システムの開発者を紹介した番組を放送し、好評を得たことは知られている。その番組も自分も開発に参加したのに放送してくれなかったとの苦情が多く来て、番組を中止せざるを得なかったと聞いている。このように技術者は素晴らしい創造を行っても一般には特別な場合を除いてグループで仕事を行っているため個人名は表に出ない。しかし、昔から多くの名も知られぬ技術者によって色々なものが技術開発、創造されて、いわゆる社会が進歩し、生活が楽になり、便利になってきており、技術者の社会への陰の功績は大きい。

  日系英国人のカズオ・イシグロ氏が今年のノーベル文学賞を受賞した。日本人の数年連続のノーベル賞受賞はアメリカ以外に無いと思われ、日本人の素晴らしさを世界的に示すもので大変喜ばしいことである。
  以前ノーベル医学・生理学賞受賞者の大村先生は受賞した時、若い学生、生徒に「好きなことをやれ」と言っていたが、好きなことが出来るのは大学の先生、芸術家、スポーツマン、勝負師ぐらいで、社会に出れば、社や組織の方針、世のニーズへの対応等、何れの職業においても何らかの制約の下に仕事をしなければならず、好きなことをやれないことが多い。世の中が勝手に自分の好きなことが出来る社会を期待して巣立っていくと期待に反することばかり経験することになり、不満の人生を歩むことになる。従って、大村先生の言葉は「自分の長所、特長を伸ばし、生かして、世の中のためになる事をやれ」とするのがより適切であるように思う。

  最近、将棋の藤井総太、卓球の張本智和、水泳の板飛び込みの金戸凛、スキージャンプの高梨沙羅、ゴルフの畑岡奈紗など中学生や10代の若い人が日本や世界のトップレベルの活躍をしている。これらの現象を観るとこの世代はこの世代の教育、環境等により育てられたことによるものであり、スポーツばかりでなく、科学技術や文科系等その他の分野でも創造的な優秀な人がいるのに、結果が直ぐに表立って分かる分野ではないので分からないだけなのではないかと推測し、現在の大人には異常な悪人が多く現状には失望するが、日本の将来は希望が持てるのではないかと思っている。
posted by でんきけい at 00:00| Comment(1) | 沢辺レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最近の10代の若い人達の活躍に拍手喝采し、大いに期待したいという沢辺さんの見立てには全く同感です。もう我々の歳になると、自分では殆ど何もできませんから、彼らの将来に思いを馳せることが唯一の楽しみですが、翻って、最近の神戸製鋼や東芝などの問題を聞くにつけ、どうなっているのかと心配です。今の経営者がダメだとか、けしからん、と言うのは簡単ですが、よく考えてみると、彼らは、我々世代の次の世代、あるいは、次の次の世代でしょう。そうすると、彼らを育てたのは我々世代です。それならば、こうした現在の日本の凋落ぶりの淵源は我々世代にあるとも言えます。
Posted by 武田充司 at 2017年10月23日 21:13
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