2018年07月01日

ディズニーランド(1)/齋藤 嘉博

  今年は東京ディズニーランドが開園して35周年を迎えます。

  開園当時はたくさんの人がスペースマウンテンへ、イッツ・ア・スモールワールドへなどと走りこんでアトラクションをたのしんだものでしたが、なかなかステージの踊りやパレードに溶け込んだりすることはありませんでした。しかし最近は態変わり。若いひとたちはコスプレ。白雪姫はもちろんシンデレラ、ピーターパンや魔女の衣装に身をくるんで園内をはしゃぎまわり、パークの雰囲気にとけ込んでいます。
  私がはじめてアナハイムのディズニーランドを訪れたのは1965年の正月。丁度開園10周年の記念行事でにぎわっているときでした。Dz-1(88%).jpg
  朝からアドベンチャーランド、ファンタジーランドと次から次へと遊んで、ワー世の中にこんな楽しいところがあったのかと時の経つのを知りませんでした。私の子供のころに遊んだ遊園地と言えば豊島園のウォーターシュート、向ケ丘遊園のマメ汽車、それに時折母がつれていってくれた浅草松屋の7階だかにあったスポーツランド。カワラケの玉を雷様のおなかにぶつけるとウーとうなり声をあげるのに興じたものでした。しかしディズニーランドはスケールが違います。この遊園地、いやテーマパークは私が90年の生涯に得た三大カルチャーショックの一つ。こうした感動は子供のうちに与えるに限ると、なけなしの金をはたいて’77年には子供たちを連れてクリスマスのディズニーランドを訪れたものでした。

  仕事を忙しくしているうちにディズニーの話はしばらく忘れられておりましたが、時が経って武蔵野美術大学に招かれたときに悩んだのがゼミのテーマ。私のメインの教科は当然映像技術なのですが、映像学科のゼミで技術論を振り回してもサマになりませんし学生も面白くないでしょう。技術と映像の接点。そこで思い浮かんだのがディスニーアニメーションでした。ウォルトはアニメーションを制作するのに次々と新しい技術を導入しているのです。例えばミッキーマウスが初めて登場する「蒸気船ウィリー」ではその前年に出来た映画、ジャズシンガーで初めて使われたトーキー技術を自分並みに消化して使いました。最初の長編アニメーション「白雪姫」のためには遠近感をより強調できるマルチプレーンカメラを作りましたし、「101匹わんちゃん」では、できたばかりのゼロックスを利用して沢山のワンちゃんを効果的に作り出しまし。ウォルトは自分の家の庭にセントラルパシフィックの八分の一スケールの機関車を走らせるほどのマシンマニアでこれがのちのディズニーランドの発想につながっているのです。こうした技術と映画の接点を学生諸君に知ってもらってこれからの急速なコンピュータ発展の中で作る映像の本質を議論しようと思ったのです。もう一つ、前述の蒸気船でミッキーマウスが誕生したのが1928年の11月。私の生まれが同じ1928年。つまりミッキーマウスと私は同年配の友達!

  しかし楽しみでディズニーアニメをみているときとゼミとではわけが違います。そう決めてからが大変でした。映像学科の一期生にゼミが始まるのがあと2年後。その間に十分な準備をしておかなくてはなりません。まず白雪姫にはじまる長編アニメはもちろん、ミッキーマウス誕生以降の彼の短編アニメ約140点、ミッキーマウスに6年遅れて「かしこいめんどり」で登場するドナルドダックのアニメ170編、それにミッキーマウス以前のオズワルドを含めて視聴可能なものはほとんど見たものでした。ロスアンゼルス、NYでは本屋に入り込んでディズニー関連の本を探しました。なかでもフィンチの“The Art of Walt Disney”、ベイリーの著した”Walt Disney’s World of Fantasy”、ウォルトの下で実際にアニメを作ってきた二人のアニメーター、フランク・ト―マスとオリー・ジョンストンが記した”The Illusion of Life“の3冊は大変勉強になりました。

  そしてゼミは?その様子をなかなかこの紙面でお伝えすることは難しいのですが、大学を退職後、東京ディズニーランドの大きなスポンサーである講談社からの求めに応じて、同社発行の雑誌「ディズニーファン」に”おもしろ映像学”、”ディズニーチャットルーム”というタイトルの欄を8年にわたって連載してきました。前者は白雪姫に始まるディズニーの長編アニメをタイトルごとに解説したもの、後者はN嬢との対談形式で映像表現の成り立ちを話したものですが、以下にそのタイトル、サブタイトルの一部を記して、ここからゼミの様子の一端を想像していただければと思います。

ディズニーチャットルームのタイトルとサブタイトルから

9.月が出るのはどんなとき?
 「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」で月が何度も出てくるわけは
満月の夜は血が騒ぐ、「101匹ワンちゃん」の遠吠えのシーンにも月
「ワンワン物語」、「アラジン」。ロマンチックな夜のシーンに欠かせない満月
13.キャラクターが酔うのはどんなとき?
 「ダンボ」の酔い方はまさに理想的
「田舎のねずみ」のアブナーはお酒に酔っていたのか?
目をみればわかるミッキーの酔い心地
15.  身に着けるものでわかる
 「シンデレラ」は舞踏会のドレスで表現
「美女と野獣」のベルの気持ちの変化が服の色でわかる
「ジャングルブック」、モーグルの赤いパンツは人間としての象徴
18.車の描かれ方でわかるアメリカの文化
 アメリカ人の車の使い方を描く「ミッキーのライバル大騒動」
昔と今の価値観の変化を批判している「カーズ」
「ミッキーの移動住宅」にはウォルトの夢が詰め込まれている
24.火に含まれている意味
 「ジャングルブック」で人間と動物の火の関係を端的に表現
本性を現した火は多くの作品でヴィランとして登場
「ノートルダム」では意味の異なる火が4回登場
描くのが難しい火のシーンが沢山登場するのはアニメーターの技術

学生たちと一緒に遊んだディズニーランドについてはまた稿をあらためて。
posted by でんきけい at 00:00| Comment(0) | 斎藤さんのお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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