2019年03月16日

人間って何だ(1)/齋藤 嘉博

  NHKのEテレで1月14日から「人間って何だ,超AI入門」という番組が放送されています。10回の各回テーマを持ったシリーズで第1回は会話する、現在第9回で「暮らす」、そして「味わう」で終了の予定です。ご覧になっている方もおられると思います。
  その第5輯は「勝負」でした。コンピューターAIという言葉が何時頃から人口に膾炙されるようになったのか知りませんが、ディープラーニングという言葉は囲碁でプロ棋士にコンピューターが勝ち始めた頃(2006年)であったように思います。ゲームとコンピューターとのかかわりはチェスが最初だったでしょう。その後、完全情報ゲームにはコンピューターとの対戦が次第に多くなりました。ゲームのなかでももっとも複雑な囲碁については遅れて2016年にAlpha碁がプロ棋士との対局に勝って急に脚光を浴びるようになりました。
  碁ばかりでなくすべてのゲームあるいはスポーツでも練習の量が上達の決め手になるのは当然。完全情報ゲームについてはどれだけ先を読めるかが大きなカギとなりますが、そのためには先人の図譜を勉強、研究することが大切。Alpha碁では1時間で過去の棋譜7万局を勉強するのだそうです。これでは人間はとてもかないません。こうしたラーニングの結果から以前は悪手と考えられていた手、例えば早い段階で三三の位置に打つということは将来の勢力に寄与しないなどという理由で悪手とされていました、しかし最近のAI碁ではこれも場合によってはいい手と思われるようになっています。そしてこうした過去の悪手のいくつかはAI碁を勉強した最近の若手棋士によって使われ、とてもよい成績を収めているのです。
  もう一つ、昨年の日本シリーズでは広島の善戦にもかかわらずソフトバンクホークスが優勝しました。その源にはAIがあったのだそうです。ソフトバンクは毎回の試合のデーターを丹念、詳細に集めてこれを解析し、攻撃と防御の戦略に役立たせていたというのです。野球の世界ではかねて、ゴロを打って野手のあいだを抜くバッティング、ダウンスウィングが推奨されていたのだそうです。しかし多くのデーターを分析すると20〜25°の角度でスウィングするアッパースウィングが一番ヒットになりやすいとか。ホークス陣営では早くからこうしたデーター戦略を取り入れて徹底的に日々の試合のデーターを集め、分析してきた結果が優勝につながっているとのことでした。経験からと称して長年の間に培われたジンクスの中には意外に間違ったものがあるということをこのAIがデーターで示してくれているのでした。もっともこの間における機材、バットやボールの進化がかなりの意味をもっているでしょうから、一概に昔のウソを言うことはできないと思いますが。 
  この輯の最後では麻雀が話題になっていました。これは牌が伏されていて一部の情報が隠されている不完全情報ゲーム。ここではけっこう人間の心理が働いていて必ずしも計算だけでは勝負にならない、コンピューターが人間の心理を読めるようになれば対戦も可能ということでした。話し言葉の抑揚や表情などから人の心理を読む研究も進んでいるのだそうです。そして終わりに、人間の勝負には感情がついてまわって面白いので、感情がなくなったらそれはもう単なる労働になってしまうと話されていたのが印象的でした。

  私がコンピューターに接したのはNHKの研究所で自家製の小さいコンピューターを操作した1960年だったと思います。記憶容量32kb。この”b”はバイトではなくてビット!言語はもちろんマシンランゲージ。それからしばらくしてオートマトン、チューリングマシンという言葉が聞けるようになりました。計算機で機械を操作するという考え方。この辺が現在のロボットのはしりであろうかと思います。
  一方人間の思考過程をより迅速に、より論理的にコンピューターで計算させようという動きもありました。オペレーションズリサーチ[OR]という分野です。戦時中日本の特攻隊攻撃に悩まされた米海軍が、この攻撃による損害をいかにしたら食い止められるかと考えて、そこに数学的な手段を持ち込んだのがこの学問の発端でした。それは企業の経営に影響を与えてきましたが、当時はコンピューターの能力に制限があって簡単な99×99のLP(線形計画法)の計算にも小一時間ほどかかるありさまでした。現在では格段に進歩してビッグデーターを処理して膨大な情報を得、それを分析し経営に寄与しています。こうした研究がコンピューターの記憶容量の増大、処理速度の進歩によってAIになってきたと言っていいでしょう。それから60年。現在では記憶容量も計算のスピードも全くけた違いに大きくなってディープラーニングの世界が実現しているのです。

  この稿を書き始めた翌日、朝起きるとすっきりとした青空。これならとすぐ新宿バスタから河口湖へ。ロープウエイでカチカチ山に上がってみると雲のない青空に富士山がくっきり。その裾野の広い美しさにあらためて驚いて、なるほどこれなら世界遺産になってもと。ブログ 富士(88%).jpg
カチカチ山からの富士山
  天上山の頂上まであがって富士の美しさを堪能しました。コンピューターでもこの美しさを楽しむことができるようになるのかナと思いながら。
posted by でんきけい at 00:00| Comment(1) | 斎藤さんのお話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「人間て何だ、超AI入門」という立派な番組を私は見逃がしてしまいました。最近はテレビを見ていると、1日の時間が足りなくなるのでなるべく見ないように努めていました。改めて新聞の週間番組表を眺めて、夜遅くこの番組を観られた斉藤兄に感服しました。囲碁については、私も囲碁雑誌を読んでいるので、昔悪手と言われた手が、現在では良手と評価されている経緯については同感です。野球でバットやボールの進化が関係するように、囲碁でも昔は数日間もかけていたのに、テレビの影響で短くなり、黒番のハンデも、5目半から6目半になり、国際戦では7目半になっています。昔の情報を網羅するのは必要ですが、ルールが変わっている訳ですから、AIに入力する際にウエイト付けが必要だと思います。民主主義では、投票者の1票は平等という前提ですが、各人の理解度は異なります。英国が直面している難局は、投票者の理解度にあります。AIについても、全てのデーターを平等に扱えるかどうかが問題であると思います。私のPC囲碁ソフトもAIで進化して、アマ8段になり、4段に設定しても、いつの間にか負けてしまいます。α碁の頃は、腕ずくで力負けした感じでしたが、AIでは静かに僅かだけ負けるようです。人間の勝負は感情が入るので、やはり面白いと思います。最後に、「カチカチ山からの富士山」の写真は素晴らしいですね。数々の病気を克服された斉藤兄の、精神力と体力を見習いたいと思っています。
Posted by 大橋康隆 at 2019年03月16日 18:55
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